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普通には殆
出がけのときは、やれ/\、また重苦しく気骨の折れることと、うんざり致します。逢つて見る眼には思ひの外(ほか)、あつさりして白いものゝ感じの人でございます。たゞそれに濡(ぬ)れ濡れした淡い青味の感じが梨(なし)の花片(はなびら)のやうに色をさしてるのが私にはきつと邪魔になるのでございませう。
その人は体格のよい身体をしやんと立てゝ椅子(いす)に腰をかけ、右膝(ひざ)を折り曲げてゐます、いつも何だか判らない楽器をその上に乗せて、奏でてゐます。普通には殆(ほとん)ど聞えません。私は母から届けるやう頼まれた仕立ものを差出します。その人は目礼(もくれい)して受取つて傍の机の上に置きます。そして手で指図(さしず)して私をちやうどその人の真向うの椅子に掛けさせて、また楽器を奏で続けます。その人は何も言ひません。細眼にした間から穏かな瞳をしづかに私の胸の辺に投げて楽器を奏でます。私の不思議な苦しみはこれから起ります。
その人は体格のよい身体をしやんと立てゝ椅子(いす)に腰をかけ、右膝(ひざ)を折り曲げてゐます、いつも何だか判らない楽器をその上に乗せて、奏でてゐます。普通には殆(ほとん)ど聞えません。私は母から届けるやう頼まれた仕立ものを差出します。その人は目礼(もくれい)して受取つて傍の机の上に置きます。そして手で指図(さしず)して私をちやうどその人の真向うの椅子に掛けさせて、また楽器を奏で続けます。その人は何も言ひません。細眼にした間から穏かな瞳をしづかに私の胸の辺に投げて楽器を奏でます。私の不思議な苦しみはこれから起ります。
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